ストレス・カーブの真実

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最終更新日:
2008年3月19日(水)
16:32
 
 
4484
本日の日付:
2017年5月30日(火)
16:22
DynaRod FAQ
DynaRodのご紹介
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技術情報
フライロッドの世界では、Everett Garrisonという人が随分と昔にロッドにかかる負荷とストレス(応力)の関係を計算し、これをフライロッド設計の方式とする方法を編み出しました。 その後、長い間、この方法がロッド設計の科学的方法として親しまれて来て今日にいたっています。 
Garrison方式の概略を述べると、まず、テーパー(竿の各部の太さ)が分かっている竿があるとします。 竹で出来ていますから、竿の各部(例えば5インチづつのセクション)は重さを持ちます。また、竿に取り付けられるガイドやフェルール(接続金具)、塗装、ガイドを通るフライラインなども重さを持ちます。 これらの重さが、竿を振った時に、慣性による力(慣性力)を生じ、慣性力が曲がりのモーメントを発生させます。 竿の各部(例えば5インチ間隔の位置)ごとに、今言ったいろいろな竿部品が生じさせるモーメントを計算し、合計します。  モーメントが分かると、その位置にかかるストレス(応力)が計算できます。 この応力の分布を見て、どんな竿かを類推するわけです。  この応力の分布をグラフにしたものがストレス・カーブと言われるものです。 最初は、ストレス・カーブを見ても、ピンと来ないのですが、この方式で何度も竿を作ってはテーパーを調整し、ストレス・カーブを眺めていると、こういうパターンのストレス・カーブはこんな竿だということが、なんとなく、分かってくるような気がします。 
分かってきたような気がすると、今度は、ある(分かったような)ストレス・カーブを最初に描き、これに対応するテーパーが逆計算できないものか、と考えるようになる訳です。 Garrisonさんは、これを計算尺で計算する方法を編み出したわけです。 
もっと昔のロッド設計方法は、全くのトライアル・アンド・エラーでした。 最初は、大体こんなもんだろう、ということで基本になる竿をこしらえます。 もちっと、このあたりが曲がるようにしたいなあ〜、ということで、次回はその部分を少し削って細身にします。 そしてまた振ってみて、ああこれは良い調子だ、なんていう風に、作っては調整し、調整しては作る、という方法だったようです。 とはいえ、トライアル・アンド・エラーの要素は何時の時代になったとしても、竿作りでは残るものだと思います。 
さて、今回ご紹介するロッド設計方法は、Maxが編み出したものです。 
長くGarrisonさんの方法でやってきましたが、今ひとつ、設計目標に自信を持って設計しているというような気にならなかったわけです。 上でわかったような気がする、と述べたのはこのためです。  ストレス・カーブを目標にする、ということ自体に少し無理があるんではないか?と考えました。 Garrisonさんのストレス・カーブは、構造設計的で、内部応力を計算する、というタイプの計算です。 このため、竿が曲がり、竿の先端部が実際にはのびきっているにもかかわらず、ストレス値はぐんぐん大きくなっていってしまいます。 となると、設計目標としてのストレス・カーブを描く際には、実際とは異なる架空のストレス・カーブを描いている、ということになります。
Garrisonさんのストレス・カーブ
下のグラフは、昔のGarrisonさんの計算式で計算したストレス・カーブと、それを元にして描いたロッドの曲りグラフです。 前提は、Payne200 8’3ピースで、#4ライン、75フィートをロッド水平移動でTip先端が4Gスピードで計算した結果です。 PH1〜4とあるのは、ロッド移動の時間を4つの局面(Phase)に分けて、時系列的に計算をしていることを表しています。 PH4がロッド移動の最終局面です。
左図ストレス・カーブのTip先端から約30インチまでのストレスをご覧ください。 なんと、25,000 PSI(ポンド/平方インチ)付近になります。 恐らく竹の断裂点を超えているんじゃないかしら? この現象は、Garrisonさんの計算式が構造計算式であり、曲がらないものに関しての内部応力を計算するものですから当然こうなってしまいます。 
あまり意味はないのですが、このストレス値を元に、ロッドの曲がりを計算すると右図のデフレクション・グラフになります。 ロッドを水平移動しているにもかかわらずTip先端部が下を向いてしまいます。 実際であれば、Tip先端部は、ラインが引く方向、右水平方向を向いていなければなりません。
グラフはクリックすると大きくなります。
wpe14.gif (12509 バイト)     =>    wpe19.gif (12467 バイト) 
これらのグラフは、Garrison計算式を用いた昔のCastRodというソフトで計算しています。
動的時系列計算ではありますが、ストレスの計算方法はGarrison方式です。
もっと分かりいやすい、実際的な設計目標は無いものかと、8年以上思考錯誤してきましたが、結局、竿の曲がりが、誰の目にも見えて、目標としやすいのではないか、ということに行き着きました。 ある一定状況のもとで、竿がこのように、この程度に曲がってほしいとすると、どういうテーパーで作れば良いか、というように、最初に竿の曲がりを考えるわけです。  和竿師が、丸竹を手に取り、手で押さえてみて、仕上がった竿の曲がりを想定するように、この方法では、竿がこのように曲がって欲しいという絵を描くわけです。 曲りが決まれば、あとはコンピュータで竿のテーパーを計算できます。  竿の曲がりも、実際に振っている時に、どう曲がっているかは、自分では分かり難いものです。 が、同行している釣り人が振っているところは見たことがあるでしょう。 いずれにしても、ストレス・カーブよりは、客観性があることには間違いありません。
そこで、竿の曲がりを設計するツールをExcelを利用して作りました。 このツールを使うとどんなタイプの竿の曲がり方も、綺麗に描くことができます。 これをプログラムで受取り、難しい計算をしてテーパーに変換するわけです。
苦労したのは、動的時系列計算です。 Garrisonさんの構造設計的計算方法では、竿の実際的な曲がりは計算できません。 曲がりを表現する動的時系列計算では、時間経過の概念を導入する必要があります。 刻々と変わっていく竿の曲り形状を追跡して計算を繰り返します。 計算に多少時間が掛かりますが、それなりにリアルな竿の曲がりを計算できます。 竿が曲がって竿先が伸びきる様子も、そのように計算されストレス・カーブに全くそのように現れます。 
DynaRodのストレス・カーブ
以下のグラフはDynaRodの動的時系列計算の出力です。 左側がロッドの曲がりグラフ、右側は対応するストレス・カーブです。 計算前提は、Garrisonさんの例と全く同じです。 Payne200 8’ 3ピース #4ライン 75フィートを水平移動で4Gスピードで動かしています。
ロッド曲りグラフでは、ラインが水平方向にロッドを引く様子を実際に近いように計算されています。 右のストレス・カーブは、ロッドが最終局面で大きく曲がった時に、Tip先端部はの延びているためにストレス値が低くなっていく様子が表現されています。
wpe2.gif (12519 バイト) wpe4.gif (14956 バイト)
これらのグラフはDynaRodの出力です。


以上
 
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